天日干し

とある会社員の観たもの・読んだもの日記。ネタバレには細心の注意を払っておりますので、気軽にどうぞ。

【本】社会・組織に属することと自分の正義。『鉄の骨』(池井戸潤)

空飛ぶタイヤに続いて、今度は、池井戸潤作品を小説版で。

文庫本で650Pと、少しボリュームは在りましたが、ミステリー?の要素も入っており、手が止まりませんでした。序盤は、”談合”に関して、企業同士のやり取りが丁寧に描かれ、後半は一転、その”談合”が障壁になり、”競争”が阻害される状況に立ち向かい、最後まで、どうなるのか想像もつかない展開でした。

 ゼネコンの”談合”がテーマの本作。主人公は、中堅ゼネコンのある若手社員。

突然、公共事業の営業=”談合課”に配属されます。大手も含め、当たり前のように”談合”は行われており、各社の経営層も、当たり前のように、”談合”に参加します。当初は、驚いていた主人公自身も、”相互扶助”?””公益?”の名のもと、自身も、それに染まっていきます。が、”談合”を仕切る大物との出会いで、その思いも徐々に…

一方、検察側も、ゼネコンの”談合”には、目を光らせており、次々に、摘発しながら、業界の大物に目を付け、動き出します。

後半は、ある大型案件の受注を舞台に、”談合”を止めたい・”公正な競争”としたいという思いと、”談合”を必要とする業界の体質がぶつかりあい、企業間の死闘に入っていきます。何が正しいのか・誰が正しいのか(・”談合”は必要なのか不要なのか)、そして、最後に誰が勝つのか。最後まで、手に汗握る展開でした。

企業間のお堅いやり取りだけでなく、主人公の恋人との恋愛も多く描かれていますが、物語の主軸にも関わる部分があったり、仕事にプライベート迷う若手社員を身近に感じることで、より物語に入り込める良いアクセントになっていると思いました。